第54話    「楽しい春タナゴ釣り」   平成17年04月17日  

今年の冬は例年の1.5倍、場所によっては3倍となる大雪に見舞われた。そんな当地にも遅ればせながら遅い春がやってきた。昨年は10日ごろには桜の花が散り始めていたと云うのに今年はまだ固い小さな蕾のままである。

今年は大雪のせいで49日(土)と例年より10日ばかり遅れてタナゴが釣れ始めた。いくら遅い春とは云え、海の中の魚たちはじっと低温に耐え水温の上昇を待っていた。だからその魚に合うある一定の水温に達すれば、いっせいに活発に動き出すのである。それが自然の摂理なのである。

庄内の黒鯛のノッコミは当地から30数キロ南にある沖磯通称四つ島から始まる。そこから地磯に来るまでは約半月を要する。ノッコミの黒鯛を狙う習慣のなかった庄内でも、オキアミが入ってきた約30年位前から春のノッコミ黒鯛を狙うようになった。当時長い冬を過ごしてきた釣りに飢えた釣り人達の多くは、長い89mと云う鮎竿を中通し竿に改造した竿を持ち込んで我も我もと四つ島へと繰り込んだものだ。それが最近ではタナを広範囲に探ることの出来るウキフカセ釣りをする若者たちに占領されている。

春のタナゴ釣はのっこみの黒鯛を釣らないが為の釣りでもあった。以前は5月の声を聞いてからの釣で、アイナメ、クジメ、テンコ、ハジメなどの根魚、二歳タカバ、アジなどの小物を狙い楽しんだ。そして黒鯛の産卵の終了して後にようやく黒鯛を釣ったものである。産卵後の黒鯛は不味いので実質は、体力の回復した10月頃からの釣りになる。

自分たちは初夏より釣れ始める小型黒鯛狙いの前の小手調べに春タナゴを良く釣る。大型の三歳タナゴが釣れると黒鯛の二歳半くらいの手応えを感じるからで、初夏に入る頃までのつなぎの釣のひとつとなっている。タナゴも二種類いて流線型の形をした沖タナゴは当りは中々分かりずらい。その為イサダ釣りをするようになってからは感度の良いヘラウキの大き目の安いものを使用している。それでも喰いの良い時は、ウキを消しこむが、少し悪いときはヘラブナと同じようなホンの僅かなあたりを探して合わせなければならない。これが色々な釣りの練習になっている。

最盛期になれば数釣も可能で、タナゴ釣のファンは年々増加している。人によっては好き嫌いがあるが、塩を振って冷蔵庫に23日寝かしたものが美味しく食べられて家族の者にも好評だ。それを良い事に以前は一日かがりの釣で100200と釣って来て、どうするのと友達に分けたりしたものだ。いくら美味しいと入っても、毎週のように100200では家族もたまったものではない。最近では食べる分だけで十分の釣をしている。

とにかく乱獲だけは止そうと云う気になって来たのは、つい最近10年くらいのことでまことに面目ない次第である。その昔の釣では生活のかかった釣であったから、100匹を束と云って数え、100匹釣れば一束、200匹釣れば二束と云っていた。子供の頃ハゼ、コアジ、シノコダイなどがこの束釣(そくつり)の範疇に入り、ついで車で出掛けるようになるとタナゴ釣もこの範疇に入って来た様に思える。友達との話の中で先週、何処何処で何束釣った等と云う自慢話に花が咲いたものだ。

しかし現在コアジ釣を除いて束釣はかなり難しくなった。以前より魚が居なくなったのである。限られた中で小数の魚を一匹づつ楽しんで上げるしかないのだ。